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大切な娘だもの。

[ウミガメのスープ]

背中の中ほどまで伸ばした美しい黒髪は、千枝にとって密かな自慢だった。髪を伸ばし始めたのは幼い頃に母親に褒められたのがきっかけだったが、爾来彼女は髪の手入れを気にかけるようになり、中学に上がった頃にはシャンプーやトリートメント、ブラッシングの方法や食生活にも気を配るようになっていた。しかし最近は睡眠不足のためか枝毛が出来ることが多く、その度に彼女は髪の先端から数センチ程度を切り、枝毛を処理するようになっていた。さて、彼女が枝毛を切る際、髪型に違和感が出ないよう一度に切るのは精々数本ずつにしているのだが、それでも彼女の母親は枝毛を切った千枝を見るとすぐ彼女が髪を切ったことに気付く。一体何故だろうか?


出題者:
出題時間: 2018年4月21日 23:17
解決時間: 2018年4月21日 23:28
© 2018 TATATO 作者から明示的に許可をもらわない限り、あなたはこの問題を複製・転載・改変することはできません。
転載元: 「大切な娘だもの。」 作者: TATATO (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1190
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★★★正解★★★
年に一度しか会わないのに、髪の長さが前回会った時と変わらなかったから。

★★★物語★★★
千枝が地元の大学を卒業し都会の企業に就職してから早三年。一人暮らしにも慣れ、仕事もだいぶ熟せるようになってきた。しかし悲しいかな、仕事が出来る人間には多くの仕事が舞い込むのがこの世の常。日に日に彼女が抱える仕事量は増えて残業も多くなり、それに反比例するかのように彼女の睡眠時間は減る一方だった。土日は平日の疲れを癒やすため長めの睡眠を取り、残った時間は買い物、料理、洗濯、掃除、そして持ち帰った仕事を消化するだけで終わってしまう。気が付けば、両親の住む実家には正月休みくらいしか行かなくなっていた。

そしてその年の年末、仕事納めの日。何とか今日だけは定時で帰ろうと考えた千枝は、いつもより2時間ほど早く会社に来て仕事を始め、昼休みも取らず働き続けて何とか夕方頃にその日の業務を切り上げた。会社を出ると最寄りの駅まで急ぎ、そこから自宅とは反対方向の電車に乗る。新幹線とローカル線、そしてバスを乗り継ぎ約4時間。御世辞にも栄えているとは言えない小さな町のはずれにあるバス停に降り立つ。そこからさらに十数分歩いて漸く実家の前に辿り着くと、安心したような懐かしいような気分になる。ゆっくりと玄関のドアを開けると、すぐに母親が迎えに出てきた。

「ただいま」
「お帰りなさい」

一年に一度しか帰ってこないにも関わらず「ただいま」と言うことに微妙な気不味さを感じながらも、母親の返事に心が安らぐのを感じる。やっぱりここが自分の家なんだな、などと考えながら脱いだ靴を揃えていると、母親が口を開いた。

「あら、また髪切ったの?」
「そりゃ前回から1年も経ってるんだし、髪くらい切るよ」
「子供の頃はずっと伸ばし続けてたのにねぇ」

一年前の髪の長さまで覚えていてくれる事に改めて母親の愛の深さを感じつつ、千枝は「これからはゴールデンウィークや夏休みにも帰省しようか」などと考えていた。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
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Cindy