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君はロックをかけない

[ウミガメのスープ]

この前、僕(洋平)がテレビ見てたら、名店特集みたいなのをやってて、
その中で、最近オープンしたってパスタ屋さんが紹介されてて、わりと近所だったのよ。
だから、パスタが好きって言っていた愛美に
「おいしいパスタがあると聞いたんだけど、愛美ついて来てくれる気ない?」って誘ってみたの。

そしたら、
「洋平と行くってこと? んー、インスタ映えするなら良いよ。」って返事でさ。
一緒に来てもらえることにはなったけど、思ったよりツレない返事だったんだよね。

それで当日、待ち合わせ場所に約束の時間…よりはちょっと遅れて到着したら、ベンチに座ってiPhoneを触っている愛美がいてさ。
近づいて顔を覗きこむと、僕に気付いてムッとした表情になってね。

「あー… 愛美ごめん。もしかして待ってた?」って謝ったら
「もーー、待ったよ!12時集合でしょ!」だって。

そう言って愛美はそれまでいじっていたiPhoneを、時計が見えるようにロック画面にして僕に見せてきたんだけど、
僕は愛美のiPhoneにロックがかかっていたのを見て、驚き落胆したんだ。

一体なぜだか分かるかい?

※雰囲気重視のため、回答は洋平が行いますが、普通のウミガメのスープですので、本来洋平が知り得ない事でも回答されます。
また、出題者であるスクエアが回答に補足をつける場合があります。


出題者:
出題時間: 2021年7月31日 21:02
解決時間: 2021年7月31日 21:25
© 2021 スクエア 作者から明示的に許可をもらわない限り、あなたはこの問題を複製・転載・改変することはできません。
転載元: 「君はロックをかけない」 作者: スクエア (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6250
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友達としての付き合いの方が良さそうだね、ってことで僕らは別れた。

だから別れてからもしばらくは、今日あった些細な事を報告して笑いあったり、何かあればたまに会うことだってあった。

そんな感じだから、別に寂しいとかはなかった。と思う。
また他の誰かを好きになって、その人と一緒に生きたいと願って、もしかしたらまたすれ違ってしまって。
そんな風に過ごせるものだと思っていた。

僕にとって愛美が一番のパートナーだったと気づいたのは、それから一年ほど経ってからだった。

…そういえば最近は連絡を取っていない。
ふとテレビを見ると、近所の名店特集、それも僕と愛美が好きなパスタのオープンしたばかりの店が紹介されていた。
誘い出す口実にはうってつけだ。

「おいしいパスタがあると聞いたんだけど、愛美ついて来てくれる気ない?」

付き合ってたころのイメージだと
「えー!行きたい!いつ?予約いるところ?」って返信が来るはずだったから
「洋平と行くってこと? んー、インスタ映えするなら良いよ。」ってツレない返事なのは予想外だったな。

当日は12時にお店近くの休憩所で待ち合わせということになった。
とはいえ、時間までに到着する気はもともとない。
目的のパスタ屋も予約の必要がない店だったから、別にゆっくり行ったって問題ない。
こういう時、僕は大抵待ち合わせ時間には現れない。
付き合いはじめの頃は時間通りに来ていた愛美も、それを分かってか遅い時間に来るようになっていった。

そのはずだから、僕がたった5分しか遅刻しなかったのに、待ち合わせ場所に愛美がいるのは不思議な光景だった。

スマホを触って待っていたから、「おーい」と声をかけたけど無反応。よく見るとイヤホンで音楽を聞いているみたいだ。
近づいて顔を覗きこむと、僕に気付いてムッとした表情になってね。

「あー… 愛美ごめん。もしかして待ってた?」って謝ったら
「もーー、待ったよ!12時集合でしょ!」だって。

そんなに時間に細かい人じゃなかったと思うんだけどなぁ。

イヤホンを外した愛美はそれまでいじっていたiPhoneを、時計が見えるようにロック画面にして僕に見せてきた。
ロック画面に映っていたのは、現在時刻と、さっきまで聞いていたであろうミュージックのアプリ。
歌手は、…Scrolling Stones?

いや、僕だって知っている洋楽の超レジェンドロック歌手だ。
疑問点はそこじゃない。



君はロックなんか聴かない。

スマホにロック曲がかかっているなんて、付き合っていたころにはありえなかった話だ。

…そこでやっと僕は気づいた。


愛美はもう別の人の彼女になったんだ。


パスタの誘いに二つ返事でOKって言ってくれなかったこと、
約束の時間通りに待ち合わせ場所にいたこと、
以前は興味もなかったロックを聞いていること、
そう考えれば全て合点がいく。

…もともとパスタが好きなのも、時間にルーズなのも僕の特徴だ。
それが無意識なのか計算なのかは分からないが、愛美は時間が経つにつれて僕に染まっていった。

「恋人は似た者同士の方がいい」とはよく言うけれど、
僕に似てきた君を見ていると、新しい君を見る楽しみは少なくなっていった。
変に気取ったりしなくて良い、そういう心地よさがあったのは間違いないんだけど、
似た者同士より違う性格の方が惹かれ合うのかも、とその時の僕はぼんやり思っていた。
理科の授業でも「対極が引き合う」って習ったもんね。

そういうワケで、僕らは距離を置くために友達に戻ることになった。

僕の中の「愛美」がそれから更新されていなくたって、日々を過ごす「愛美」は常に新しく変わっていく。
最近の「愛美」は、新しい彼氏に染まっているのだろう。

どうして昔の「愛美」のままいてくれると思っていたんだろう。
少なくとも今の「愛美」に似合うのは僕じゃない。






…あぁ、そうか。
彼女が僕に染まっていたというなら、
僕が「友達としての付き合いの方が良さそう」なんて思っていたのも移ってしまったのかな。

君がいなくなってから何も変わっていない僕だけど、
あとどれぐらい時間が経てば新しい自分に変われるだろうか。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
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Cindy