似合う色がはっきりと決まっている冬美。
その似合う色の服を手に取り、試着室に向かった。
「随分冒険した色を選びましたね」
と、その姿を見た馴染みのショップ店員に尋ねられた冬美は、
「そうなの 冒険してみた」
と答えた。
なぜだろう?
*Q6 セルフリサイクルです。
転載元: 「【冒険ますか?リサイクル】you can try to change my mind」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10372
*今までは好きな人の好みに合わせた色の服ばかりを着ていた冬美が、「自分の本当に好きな色」を手に取ることにしたから。
ある時から、冬美は、自分に似合うターコイズの服を選ばなくなった。
ロイヤルブルーも。マゼンタピンクも。黒さえも。
「いらっしゃいませ」
サザンモートのセレクトショップ、「Chatte Blanche」に入った冬美は、やはりサーモンピンクやライトオレンジ、卵のようなクリームイエローの服ばかりを手に取った。
「そういう可愛らしいパステルカラーお好きなんですか?」
そう尋ねた店長のカメコに対し、冬美はおずおずと答えた。
「ええ、まあ…私が、っていうか、彼が、なんですけどね。」
コーラルピンクの口紅をつけ、アップルグリーン基調のふわりとしたドレスを着た冬美は、そう答えた。
その後も冬美は、「Chatte Blanche」に行くと、そういう色の服の並ぶ棚に直行した。
それから6か月ほど経ったある日、冬美は「Chatte Blanche」で目にも鮮やかなターコイズの服を手に取り、試着室に向かった。
「随分冒険した色を選びましたね」
「そうなの 冒険してみた…でも、本当はこういう色が好きだったんです。自分でも、こちらの方が似合うとわかっています」
「ですよね?ずっとそう思っていました」
そこまで言って、カメコは、はっと口をつぐんだ。
そういえば、好きな男性の好みだと言っていたではないか。
もし失恋してしまったのだとしたら…。
「そうなんです。…やっぱり、好きな人の好みに合わせるばっかりじゃいけないな、って思ったんです。やっぱり冒険して、好きな人には、いちばん好きなものを着ている私を見てもらわないと。もう今更、服の色ぐらいでフラれることはないだろうって思いますし、万が一そうなったら、その時は、その時ですw」
「…良かったです。冬美さんの冒険、応援します。間違いなくうまくいきますよ。猫のように、自由に生きてくださいね」
薄紙に包まれたターコイズのタイトなセットアップの入った、白猫のシールの貼ってあるショップバッグを受け取ると、冬美はルビーレッドのリップでにっこりと微笑み返した。