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【覚えていますか?リサイクル】いにしえの記憶を呼び覚ませ

[亀夫君問題]

明日死ぬ男。
彼は「あなたの人生で一番古い記憶は何ですか?」と私に尋ねた。
何故?


Q3 kUmaさんのリサイクルです


出題者:
出題時間: 2026年2月22日 20:56
解決時間: 2026年2月26日 6:40
© 2026 光四 作者から明示的に許可をもらわない限り、あなたはこの問題を複製・転載・改変することはできません。
転載元: 「【覚えていますか?リサイクル】いにしえの記憶を呼び覚ませ」 作者: 光四 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10767
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簡易(?)解説:男は死刑囚で、私は明日その執行をする役人。男はごく幼い頃に両親を強盗犯に殺された光景が人生で一番古い記憶で、それを頼りにかつての強盗犯に復讐を果たしたほどだったので、特別変わった記憶でもないであろう私に対して、皮肉を込めて死刑前に最後の質問をしてみたのだった。

詳細解説↓(なぜこうも長くなってしまうのか)

私はウミガメ国の役人。
ウミガメ城の城下町で死刑執行人などの仕事をしている。とはいえ、さすがに死刑などはそうそうないのだが。

ある日の朝、死刑囚の一人が「あなたの人生で一番古い記憶は何ですか?」などと尋ねてきた。私は(何故そんなことを尋ねる?)と考えたが、分からなかった。

その男には、明日、死刑が執行される。
死刑執行する当人である私には、昨日の朝には上から通達がきていた。それで男の顔を一目見ておこうと今朝、男の牢の前に行ったところ、そんなことを尋ねられたのだ。
男に尋ねられた時点で、私は執行を知らされていた。男が刑を逃れようと脱走することを防ぐため、男には当日の直前まで執行は知らされないのだが、もしかしたら男にもどこからかその情報が漏れて、私を揺さぶって逃げる隙をうかがっているのだろうか?とも考えたのだが……。

その日は昼までで仕事は終わりで、私は男との会話のあと、ウミガメ城城下町からシンディ村へやってきた。馬車なら大して時間はかからない。1日のうちに数往復はされる。
私はシンディ村の広場に行き、露店で酒を数本買って適当な石の上に腰掛けた。広場はそこそこ賑わってはいたが、私の近くには人はいなかった。
男が脱走しないか不安というのもあったが、男の質問に対する疑問、そして罪人とはいえ自分が明日人を死に至らしめるという事実で、少々精神的に参っていたのかもしれない。賑わいを遠くに見ながら、私は一人でしばし酒を飲んだ。

そこへ、一人の見知らぬ人物がやってきて、私の隣で酒を飲み始める。
シンディ村のこの辺りにはあまり来ないためか、見知らぬ顔だった。
私は、酒の勢いもあり、男の質問について、その見知らぬ人に少々相談してみることにした。むろん、職務に関係することだし、万が一にも男の脱走につながってはいけないので、詳細は伏せつつだが。見知らぬこの人物と関わることは今後ないだろうし、少しぐらいは話しても良かろうと思ったのだ。どちらにせよ、明日にはある程度のことは世間に知らされるのだ。

男は幼い頃、家に押し入ってきた強盗に、目の前で両親を刃物で殺害された。男自身はまだ3歳ぐらいでまだ物心ついているかも怪しい年齢で、強盗も男を殺すことはなく金目のものを奪って逃げた。
その後、男は、その強盗を探し出して復讐することだけを目的に生き続けたと、本人は語っている。
やがて男は復讐を遂げるのだが、その際、かつての強盗だけでなく、その妻子までも手にかけた。かつて子供だった男は見逃されたが、強盗犯の行い以上のことを男はしてしまったのだ。
目撃者も複数いたため、男はすぐさま取り押さえられて当局に連行された。罪を認め、ひと月後にギロチンによる死刑が確定した。この国では、良くも悪くも刑事犯に対する執行が早いのだ。

男の罪状を死刑執行人の私は詳しく知らされているが、公には伏せられている。下手にそれを晒せば、男だけでなく私の首も飛びかねない。罪状だけでなく男の名前や執行場所、あるいは私の名前や職業なども詳しくは話せない。
とはいえ、死刑執行の心労、少々酒に酔った勢い、城下町からはいくぶん遠い場所、そして男の謎の言葉が気がかりということもあって、見知らぬ人物に対して、話せることだけでも話すことにした。

その結果、私よりむしろ男の人生で一番古い記憶はいったい何か?という疑問に思い至った。もし男の自白が全て真実であるならそれは、両親を強盗に殺害された光景かもしれない。当時男はまだ3歳程度で、しかもそれ以前の両親と過ごしたであろう幸せな時期の記憶など無意味に等しくなってしまった。男の過去については知っていたものの、男の人生で一番古い記憶が何かなど興味もなかったし考えたりしていなかったが、両親を殺害された記憶が人生で一番古い記憶になっても、それほどおかしくはないだろう。
そして私の人生で一番古い記憶は、両親と手をつないで、夕暮れの街を歩いている記憶。よくある日常の、ささやかながらも幸せな光景だ。
おそらくあの男は、自分の人生の一番古い記憶が、私も含めた一般の人間のそれとは大きく違うということを言いたかったのだろう。男のその記憶は、男の人生そのものを左右し、全てを狂わせ、しかし同時に鮮明なその記憶がかつての強盗犯に対する復讐の成功につながりもした。男にとってはその記憶が男そのものですらあるのだ。

もちろん、本当のところはどうなのかは、男本人に直接聞いてみなければ分からない。しかしとてもそんな気は起きない。あんな言葉は、すぐに記憶の彼方に消し去ってやりたい。
私は役人の資格がないのかもしれない。こんな話を見知らぬ人物にしたというだけでなく、ただ事務的に粛々と執行すればいいものを、男に対して様々な無駄な感情を抱いているのだから。

私は、相談に乗ってくれた見知らぬ人物に対して、結局詳細を話せずじまいなことを申し訳なく思いつつ、礼を言ってその場を去った。
帰ろう。
今から馬車に乗れば、日暮れまでには城下町に着く。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
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Cindy