夢枕には山男

[ウミガメのスープ]

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川上の上司は夏場になると毎週のように山へ繰り出す生粋の登山フリークだったが、ある日登山中に崖から落ちて亡くなってしまった。上司の死を聞かされた川上は驚きを隠せなかったが、恐らく不注意が招いたことなのだろうと推測した。さて、そんな川上がお気に入りの枕を使わなくなったのは何故だろうか?


出題者:
出題時間: 2018年6月2日 12:26
解決時間: 2018年6月2日 12:36
タグ:
第1回Cindyオブザイヤーノミネート作

★概要★
川上は山登り中に上司の山下と喧嘩になり、取っ組み合いの果てに山下を崖下に突き落として殺害してしまった。川上は山下の死体をこっそり山中に埋めて証拠隠滅を図ったが、翌日警察から「山下が遺体で見つかったので話を聞かせて欲しい」と話し掛けられたため、事件が明るみに出ていると知り驚愕した。川上は「犯行がバレたのは目撃者が居たからであり、犯行時に周囲に気を配らなかった自分の不注意のせいだろう」と考え、大人しく警察に連行された。その後彼は刑務所に収監されることとなり、自宅に戻ったのは十年以上後のことだった。

★ストーリー★
川上は上司である山下から毎週のように山登りに誘われ、いつも嫌々ながら付き合っていた。しかし川上が断りきれないのを良いことに山下の態度はエスカレートし、山登りの際は飲食物の調達や現地への車の運転、果ては登山中の荷物持ちまで川上に強いるようになっていた。

そんなある週末、川上は山下と共に国内有数の高山に登ることとなった。下調べした時から覚悟していたことだが、いざ登り始めてみると山道は予想以上に急峻で歩きづらい。加えて必要な装備も多く、いつも以上に重い荷物が川上の体力を奪っていく。軽そうなリュック1つで足早に先を行く山下の背中を恨めしげに睨め付けながら、川上は少しずつ歩を進めた。

そうして山の中腹を過ぎたところで事件は起きた。前日の雨で泥濘んでいた斜面で川上は足を滑らせて派手に転んでしまい、山下に持たされていた荷物を泥で汚してしまったのだ。その時山下は10mほど先を歩いていたが、川上が転倒したことに気付くとすぐに山道を引き返して来た。

「おい!俺の荷物汚してんじゃねぇよ!」

叱責の声と共に、川上を激しく突き飛ばす山下。肩の辺りから地面に突っ込んだ川上は何が起きたのか分からず一瞬動けなくなったが、すぐに我に返るととうとう堪忍袋の緒が切れ、体勢を立て直すとやにわに山下に掴みかかった。

そうして数十秒後。川上がふと気付くと、山下は数十m下の地面に倒れていた。周囲の岩場には血溜まりが出来ており、山下が絶命しているのは明らかだった。川上は暫し茫然自失となった。殺意があったのかどうか自分でも分からないが、山下の胸元を突き飛ばした時の感触は手の平に残っている。川上は数分間逡巡し---崖下まで下りて上司の死体を山中に埋めて証拠隠滅を図ることにした。それから数時間、日付が変わる頃に自宅に到着すると、川上はシャワーだけ浴びてベッドに潜り込んだ。

そして翌日の昼前。空腹に耐えかねた川上が家を出て近くのコンビニに向かおうとしたところで、二人の男が近付いてきた。

「すみません、川上さんですね?我々、警察の者です。昨晩山下さんが山中で亡くなられたのですが、少しお話を聞かせてもらえないでしょうか?」
「っ!!!」

咄嗟のことに驚きを表情に出してしまったのが自分でも分かった。何ということだろう、あの時は気付かなかったが近くに他の登山者が居て一部始終を目撃していたに違いない。周囲に気を配らなかった自分の不注意が、この事態を招いたのだ。川上はとても逃げ切れないと思い、観念して大人しくお縄についた。

その後川上は、自宅の柔らかい枕に想いを馳せながら日々刑務所の硬い枕を濡らすこととなった。


出題者:
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パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
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Cindy