早く孫の顔を見せてくれ

大恋愛の末に結婚したシン太郎とウミコ。
カメコは早く子供が欲しいと願っていたがなかなか子宝に恵まれず、有名な神社に足を運んだりその手の有名な本を買って読んだりと藁にもすがる思いであった。

そんな中、結婚から３年が経ったある日のこと。
ついに家族が３人になったウミコであったが、愛する父・カメオに子供が生まれたことを伝えたのはさらにそれから２年も後のことだったという。
いったい、どういうことだろうか。

結婚後はシン太郎、ウミコ、そしてウミコの両親であるカメオ、カメコとで一つ屋根の下に暮らしていた４人。
ウミコの父・カメオは結婚から３年、初孫の顔を見ることなく病に倒れてしまった。

「お父さん……孫のカメ吉です。遅くなってごめんね……」

小さな寝息を立てる赤ん坊を腕の中に抱きながら、位牌に向かって語りかけるウミコ。
昔から寡黙だった父からの返事はなかったが、静かに微笑んでいるような気がした。