田舎のおばあちゃんが都会のカメコにかぼちゃとニシンのパイを送ったので
世の中が少しだけ良くなった。
状況を補完してください。
転載元: 「あたしこのパイ嫌いなのよね」 作者: ZENO (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/2290【要約】
振り込め詐欺グループの一味であるカメコの元に、被害者の老女からかぼちゃとニシンのパイが届いた。
そのパイはカメコの祖母がよく作ってくれた思い出の料理であり、
そのことをきっかけにカメコは改心して警察に自首した。
カメコの供述から振り込め詐欺グループの全容が明らかになり、組織の壊滅に繋がった。
【お話】
カメコは男運が悪い。すこぶる悪い。
昔から妙な男に惚れては様々なトラブルに巻き込まれてきました。
そんなカメコが今回惚れた男は、大規模な振り込め詐欺グループの幹部。
惚れたカメコの弱みに付け込んで、カメコに「架け子」(電話役)を命じました。
本当はそんなことやりたくない、でも男に捨てられたくないから仕方なしにやっている。
だがそんな気持ちとは裏腹に、ターゲットが自分の演技を信じて詐欺が成功したときは
他人のプライバシーを土足で踏みにじるような背徳感や高揚感を感じずにはいられない。
そんなある意味異常で、ある意味極めて人間的な心理状態の中、
カメコは「架け子」としての役割を演じ続けていました。
ある日、カメコは電話帳で適当にピックアップした番号に電話を掛けました。
カメコ「おばあちゃん?あたし、あたしよ。」
老女「おや、ナオミかい?どうしたんだい?」
カメコ「(へえ、こいつの孫はナオミって名前なんだ。)そうよ、ナオミよ。
実は会社の仕事で失敗しちゃって、今週中に会社に300万円賠償しないといけないの。」
老女「本当かい!そりゃ大変じゃないか。」
カメコ「でも私、今そんなお金持ってなくて・・・。おばあちゃん、いつか返すから貸してくれないかな。」
老女「ナオミが困ってるなら、なんでダメって言いますか。どうすればいいの?」
カメコ「ありがとう、おばあちゃん!銀行振込だと税務署にバレたら贈与税を払えとか言われるから
今から言う住所にレターパックで送ってくれない?」
老女「分かったわ、すぐに送るから。」
カメコが伝えた住所は、当然、警察にバレても大丈夫なように
組織がその辺のホームレスに金を掴ませて取り寄せた住民票を利用して契約した部屋です。
カメコは、今日も仕事に成功したことに歪んだ満足感を覚えて眠りにつきました。
ところがその翌日。「ちわーっす、バイク便ですー。」
カメコの元に身に覚えのないバイク便が届きました。
カメコは不審に思いながら荷物を受け取ると、昨日の老女からの荷物でした。
中には300万円の他に、かぼちゃとニシンのパイと老女からの手紙が添えられていました。
(´ーヽ`ξ バーチャンの手紙
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ナオミ、元気にしていますか?仕事のことは大変だったね。
でも大丈夫よ。お金のことは気にしなくていいからね。
あなたのためなら、ばあちゃんはお金なんて全然惜しくないんだから。
ナオミが好きだったかぼちゃとニシンのパイを送ります。これを食べて元気を出してね。
それじゃあ身体に気を付けてね。ばあちゃんはいつでもあなたの味方よ。
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過去にも被害者の老人から手紙が添えられていたことはありましたが、
その時はカメコはそこまで動揺はしませんでした。
しかし運命のイタズラでしょうか、祖母との思い出の料理であるかぼちゃとニシンのパイが
被害者の老女と自分の祖母とをオーバーラップさせることになりました。
「そういえば、小さい頃、ばあちゃんが良く作ってくれたなあ。」
「ばあちゃん、私が中学の頃に死んじゃったけど、あの味はずっと忘れられないなあ。」
「小さい頃、ばあちゃんの布団によく潜り込んで、ばあちゃんに抱っこしてもらったなあ。」
「でも、今の私を、ばあちゃんは抱っこしてくれるかな。」
「ごめんね、ごめんねおばあちゃん。私、なんでこんなことしてるんだろ。」
きっかけはとても些細なことでした。
しかしカメコは、自分がいかに下劣な犯罪に手を染めていたのか、ようやく気が付きました。
「これ以上、同じような被害者を増やしてはいけない。」
そう決意したカメコは、すぐに警察に自首をして
自分が所属していた振り込め詐欺グループの全容を供述しました。
その結果、警察による大規模な摘発が行われ、振り込め詐欺グループは壊滅。
カメコは主犯格ではなかったものの、その責任は決して軽いものではなく、
懲役3年6月の実刑判決を受けました。
でも、カメコは決して後悔はしていません。
あの時、老女が偶然にも送ってくれたかぼちゃとニシンのパイは、
天国のおばあちゃんからの最後の贈り物だったとカメコは信じています。
「きちんと罪を償って、出所したらお墓参りに行くね。」
「ありがとう、おばあちゃん。」