カメコはカメオを恐れて思わず祈りを捧げていた。
しかし、カメオの頭が三つ以上ある事に気がつくと急に安心して、
祈るのをやめてしまった。
一体なぜ?
転載元: 「なお、カメオの頭が三つ以上ある時、成立しないものとする」 作者: 風木守人 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/236
ミズタイラノカメオは知る人ぞ知る偉人である。
非業の死を遂げたとされる、彼の首が葬られた首塚は、彼ゆかりの地である水平市の片隅に、今も静かに佇んでいた。
まるで、誰かに起こされる時を待っているかのように……
まるでその誰か以外をはばむかのように。
その場所にだけ、強い風が吹いていた。
ゴォォォオオオオオオオオーーーー(ビル風)
部活後の片付けなどに手間取りすっかり遅くなってしまった帰り道、カメコは1人真っ暗な通りを歩いていた。
「なまだんだー、なみょーふょーりゃんぎゃあーぎゃーてぃーぎゃーぎっぃっゃあっ……」
うろ覚えのユニークなお経を唱えながら、怖がりカメコは家路についた。
部活の顧問の先生は、両膝にメトロノームでも飼っているのか、表情だけ余裕綽々な部活顧問はカメコをこう言って送り出した。
「頑張ってこいよ?」
脚の震えは、将来懸念されている首都直下型地震ぐらい壊滅的だった。
あと、何を頑張れと言うのか。
自信で地震を表現する暇があったら、もっと自信を持てばいいのに。
カメコの現実逃避気味な回想をよそに、とうとう首塚の横を通り過ぎる時が来た。
「これが、走馬灯……」
カメコの妄想は止まらない。
(なんで首塚なんてつくるかなー。敵将討ち取ってテンション上がってついつい持って帰っちゃったのかな。子猫拾った小学生かアンタはー!めっ!)
アンタって誰だ。
アンタッチャブル的な意味か。
(ミズタイラノカメオといえば、色んなところにゆかりのお寺があるよねー。市の名前にもなってるし、お墓だって……あれ?)
そこで、カメコは違和感を覚えた。
(ミズタイラノカメオの墓って、他にもあったような。というか、他の市にも首塚があったよーな……)
カメコはこの時気がついた。
首塚二つにお墓一つと、最大でカメオの頭が三つ以上あることになると。
冷静になれば、全てが本当である可能性はないが、全てが嘘である可能性は十分に考えられる。
というか、眉唾に思えて来た。
「なんだ、祈って損しちゃった」
こうしてカメコは祈るのをやめた。
ちなみに、その隣で。
「首を俺の塚にーシューーーーート!! 超エキサイティーーング!!」
ミズタイラノカメオ(幽霊)は、ビル風に翻弄される首の動きに、ジェットコースター的娯楽要素を見出していたと言う。