靄の中の終演

【条件】
カメオが，年老いたＡに，Ｂの中Ｃの中だった．
　Ｂ ＝ Ⅰ Ⅲ Ⅱ Ⅵ Ⅰ Ⅰ Ⅴ Ⅱ Ⅰ Ⅱ
　Ｃ ＝ Ⅱ Ⅰ Ⅳ Ⅰ Ⅴ Ⅰ Ⅴ Ⅳ Ⅲ Ⅰ

【問題】このとき，Ａに当てはまるものをお答えください．

【注意】「すべての数が同じ」であるものを用いること．

【解説】

[条件]のＢとＣにおけるローマ数字の数が10個でありこれは「アカサタナハマヤラワ」の各行に，「I, II, III, IV, V」が「あいうえお」の各段に対応している．
[注意]に「すべての数が同じ」ものを用い，とあるので，各行・段の文字数が同じ五十音表（ヤ行が「やいゆえよ」，ワ行が「わゐうゑを」のもの）を用いる．

ここでＢの「VI」は「IV」が反転したものであり，全体を反転させる必要があると考える．

・すなわち，Bの一番左をワ行，一番右をア行として各記号に文字を当てはめると，
　　B＝わるいめはなとしかい（悪い目鼻と視界） となる．

・また，Cの一番左をア行，一番右をワ行とすると，
　　Ｃ＝いかせたのはもえるわ（行かせたのは燃える輪）　となる．

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以上より，[問題]は以下の通りとなる．

【カメオが，年老いたＡに，悪い目鼻と視界の中行かせたのは燃える輪の中だった．】

「燃える輪」からサーカスの火の輪くぐりを連想し，視力と嗅覚の衰えたＡがカメオに使役されて燃える輪の中に行くことがわかれば，

Ａ＝（年老いた）ライオン　と正解が導ける．
　（虎や馬など，条件を満たす生物であれば正解とする．）

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【補足】

（今日は俺にもあれをやらせろ．）
ウミガメサーカスの舞台袖で出番を待つ調教師のカメオは，隣に座る長年の相棒の眼差しから，そう感じとった．

お前には，分かるのか．
年老いて目鼻がほとんど利かなくなり，かぶりつくまで鶏肉とタオルの区別がつかない．
そんなお前にも，今ステージで何が起こっているのか，そして今日がお前にとってどんな日であるのかが分かるというのか．

：

ステージに目を移すと，若いライオンたちが次々と火の輪を力強い跳躍でくぐり抜けていく．
今では台座の上で小さな芸をするだけとなり，すっかり肢体の衰えた老ライオンにあれができるのだろうか．

本当に大丈夫か．カメオはもう一度相棒を見つめた．
白く濁り，ほとんど視力を失った双眸．そこにかつての強い光が宿っているのを，カメオは見た．

：

「よし，行くぞ！」
そう言いながらも，カメオは相棒に押し出されるようにしてステージへと駆け出した．
後に続いた老ライオンが，軽やかな身のこなしでカメオとともに火の輪くぐりのスタート台に上ると，満員の観客のみならず他のスタッフからも大きなどよめきと歓声が起こった．

カメオの眼前には，燃え上がる火の輪がさっきよりも大きく迫っている．
もうもうとあがる煙の中，もはや互いに視線を合わせることはない．
「行け！」
カメオが，年老いたライオンに，悪い目鼻と視界の中行かせたのは燃える輪の中だった．

割れんばかりの歓声．鳴り止まない拍手．
この日を最後に引退を迎えた老ライオンの雄姿は，カメオとその場にいた者たちの脳裏に焼き付いて離れることはなかった．