賽は投げられた

仕事中、他人様のお宅にお邪魔していた所に「貴方の息子が事故に遭い、病院に搬送された。」と、病院から連絡を受けとった男は急いで車に乗り病院へ向かう。
道中、再び病院から連絡が入り「貴方の息子が危篤になった。最期を看取るために出来るだけ急いで来院して欲しい。」と告げられると、男はゆき先を変えようとハンドルを切り、車ごと崖から落ちて亡くなってしまった。

一体どうして？

*日本人の多くが知っているであろう特殊な知識が必要です。
キーワードが出た後でネット検索が必要かもしれません。

【息子の逝き先を賽の河原から浄土へ変えるため】

妻に先立たれ男手ひとつで息子を育てて来た僕は、壇家さんをいくつも抱える寺で坊主をしていたせいで息子にあまり構う事が出来なかった。
のにも関わらず息子はまっすぐ育ってくれたんだ。

その息子が今、今際の際に立たされている。
妻は先に浄土へ渡ったけれど、僕はまだ存命だ。
このままだと僕という親を現世に残して逝ってしまう息子は賽の河原へ堕ちるだろう。

どうか息子に安寧を。
僕は今から罪を犯す。
きっと僕の逝き先は地獄だろう。

父さん母さんお義父さんお義母さん、カメタがもうすぐそちらへ逝きます。
カメコ、カメタを頼む。