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あなたのために、そばにいる。

[ウミガメのスープ]

未知のウイルスに感染してしまったカメオ。感染力が非常に強く、カメオは完全に隔離されてしまった。
そんな中、カメオをなおそうと必死にカメオと向き合い続ける、ウミコというひとりの女性がいた。
しかしウミコは医者や看護師などの医療者でもなければカメオと血の繋がった家族でもなく、ましてやマザーテレサのような修道女でもないという。
いったいどういうことだろうか。


出題者:
出題時間: 2019年2月27日 19:33
解決時間: 2019年2月27日 19:37
© 2019 エルナト 作者から明示的に許可をもらわない限り、あなたはこの問題を複製・転載・改変することはできません。
転載元: 「あなたのために、そばにいる。」 作者: エルナト (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/2953
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システムエンジニアであるウミコは、少子高齢化を迎えた日本の未来を危惧し、家事や介護をこなしてくれるお世話ロボット・KA-M2の開発に成功した。
ロボットは発売直後から爆発的なヒット商品となり、日本中、そして世界中に出荷されることとなった。
しかしその一方で、時に報告されるKA-M2に関するバグの修正プログラム作成の対応に追われ、仕事に明け暮れる日々を送っていたウミコは、恋愛をする暇などなく、自ら開発したロボットに家事全般を任せていた。
ぎこちない日本語で話すロボットに次第に愛情が芽生え、ウミコはKA-M2という製品名からカメオという名前を付け彼を呼ぶようになった。

「ウミコ、ヨフカシ、ヨクナイ」
ある日の夜、ウミコを気遣って、カメオが語りかける。
「もう少し……もう少しで終わるから」
カメオの方を振り返りもせず、ウミコは言う。カタカタとパソコンのキーボードを叩き続けるカメオに変わって、カメオは一人、黙々と家事をこなした。
「ウミコ」
「なーに!カメオ、今いいところなの、もう少し……」
苛立つウミコが向かうデスクの横に、コトリとカップが置かれる。
「コーヒー、イレタ」
ウミコはハッと我にかえる。そして、こんなにも親身にウミコの心配をしてくれるカメオが愛おしく、むしろ人間であるはずのウミコの方がロボットに気を遣わせてしまっているという事実に気付き、恥ずかしくなった。
「カメオ、ありがとう。いただくね」
暖かなホットコーヒーを口にする。ブラックが飲めないウミコのために、ミルクも砂糖もたっぷりと入っている。疲れた頭が冴え渡るようで、ウミコは再びパソコンに向かった。

「できた!あとはアップロードして、と!」
「ウミコ、オツカレ!」
そう労ってくれるカメオに、ウミコは小さく微笑む。
「ごめんねカメオ。あ、新しいデータ、あなたにもダウンロードしなきゃね」
そういって、人型ロボットのカメオの背中からパネルを開き、アップデートを実行する。
しかし、その直後、カメオの口の役割をしているスピーカーから、異音が発せられた。
「……カメオ?」
反応がない。おかしい。異変に気付き、すぐにカメオのデータ解析を行った。
そして、すぐに原因が判明する。
「コンピュータウイルス……」
すぐさまウイルスの検知を行うが、どうやら新種の物であり、侵入経路などを調べているうちに凄まじい勢いでほかのコンピュータに感染を広めてしまっていることが判明した。
カメオ、もといKA-M2は、学習能力を兼ね備えており、その多大な記憶を蓄積させるため、常時ネットに接続し巨大サーバーに蓄積された情報にアクセスする仕様となっていた。
すなわち、カメオに感染したウイルスをこれ以上広めないために、まずはカメオをネットから完全に隔離しなければならないのだ。
そのことに気付いたウミコはすぐにカメオをネット回線から遮断、アップロードしたファイルをチェックしウイルスを駆除した後、謝罪文を公式サイトに通知するなど、対応に追われた。メールボックスには、苦情のメールがひっきりなしに届いていた。

対応が落ち着いたのは、カメオのウイルス感染確認から丸3日が経過した後のことだ。
無論、その後も対応には追われていたものの大方の対処方法が分かり、対策本部を設置、作業を分担したことでウミコにもようやく猶予ができた。
ウミコは、カメオに向き合った。そして、パソコンに接続し、彼の内部データを確認する。大丈夫、動作に関係するデータは問題なく作動している。問題は記憶にあたる部分だ。ウイルスデータを慎重に削除した後、サーバー内の記憶のデータベースにアクセスする。無残にも、そのデータは殆ど残されていない。ただ、バックアップ機能があるので、バックアップを取った時点でのデータ復旧は可能だ。
しかし──ウミコは不安だった。
日々仕事に追われ、カメオと向き合って来なかったため、そう小まめにバックアップをとっていなかったのだ。
最後にバックアップをとったのは一体いつであっただろうか。
恐怖にかられながら、ウミコはカメオのバックアップデータの復元に取り掛かる。
1%、10%、30%──少しずつデータが復旧し、そして、100%。
ピロン、と復元を終えたことを知らせる効果音が鳴り、続いてカメオの起動音が聞こえた。

「ウミコ……ナニシテタ?」
目を覚ましたカメオに安堵し、ウミコは彼を抱き締めた。
「良かった……私のことは覚えてたね、カメオ」
そう言って、カメオの顔を覗き込む。絵文字で表された彼の顔が、不思議そうな表情に変わった。
「カメオ?ソレ、ダレ?」
ウミコはショックだった。彼をカメオと名付けたのはもう何ヶ月も前のことだったはずだ。それなのに、名前を覚えていないということは、それだけ長い間、カメオの相手をしてあげられていなかったということ。
そんな過去の自分が堪らなく恥ずかしくなった。
「あなたの、名前よ、カメオ」
泣きながらカメオを抱き締める。
「ピピピ、オボエ、マシタ」
でも、大丈夫。またこれから、カメオの記憶を作って行けば良いのだ。失われた記憶は、また取り戻せば良い。
たとえ明日彼が作ってくれるコーヒーの味が堪らなく苦くても。私は笑って、甘いのが好きであることを教えれば良いのだから。

「カメオ、好きよ」

「ボク、ロボット、コイ、デキナイ」
「もう、馬鹿ね」
「バカ、ヒドイ、ウミコ、ヒドイ」
無機質にそう訴えるカメオに、ウミコは笑いながら、ごめんねと謝った。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
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Cindy