お父さんはスーパーマン！

ある日のラーメン屋さん。
カメオがケーキ屋さんに行こうと提案したのは、昼食の最中に息子のウミオが好物のラーメンを半分近く残そうとしたかららしい。

どういうことだろう？

入院中の母親が痩せてしまったのは、病院のご飯が美味しくないからだと。
だから、この美味しいラーメンをお見舞いに持って行って母親に食べてもらうのだと。
自分の大好きなラーメンに半分も手を付けずに残そうとしたウミオが、どうしようもなく誇らしくて。
どうしようもなく悲しくて。

「冷めてしまうと美味しくないからそのラーメンはウミオが食べなさい。その代わり、今日のお見舞いにはお母さんの大好きなケーキを買って行ってあげよう。」

上擦ってしまいそうな声でその場を取り繕い、僕はトイレに逃げてきた。

現実から目を背けたくて、顔を洗う。
(僕は、間近に迫った最愛の人を失う苦難を乗り切ることが出来るんだろうか。)

流れる涙を誤魔化したくて、顔を洗う。
(僕は、これからもウミオの前で強い父親を演じ続ける事が出来るのだろうか。)

赤くなった目を冷やすために、顔を洗う。
(僕は、もうすぐ居なくなってしまう妻の分まであの子に愛情を注ぐことが出来るのだろうか。)

答えはまだ出ない。