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【蜻蛉ますか?リサイクル】夢の甲子園へ

[ウミガメのスープ]

「おーい、トンボ持って来い、トンボ!」

中学1年生の夏。
野球部の僕は、監督にそう言われたから必死で野山を駆け回り、
ようやく捕まえたシオカラトンボを持って行ったんだ。
それが、あんな悲劇を生んでしまうなんて・・・!

いったい、何が起こったのだろう?

※ZENOさんのリサイクルです。


出題者:
出題時間: 2019年9月14日 22:16
解決時間: 2019年9月14日 22:34
© 2019 エルナト 作者から明示的に許可をもらわない限り、あなたはこの問題を複製・転載・改変することはできません。
転載元: 「【蜻蛉ますか?リサイクル】夢の甲子園へ」 作者: エルナト (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3567
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※最終行に要約があります。


監督が言ったトンボというのが、蜻蛉のことではなくグラウンドを整備する道具であることを知らなかった僕は、シオカラトンボを捕まえるのに何時間もかけてしまった。その間に日は落ちてすっかり夜になってしまったんだ。
もちろん、グラウンドには監督もチームメイトたちも誰もいない。
僕はショックだったよ。みんなに置いていかれたんだって。

でも、違ったんだね。
なかなか帰って来ない僕のことを、みんなは探して回ったんだ。
あいつ何処に行ったんだって。何か事件に巻き込まれたんじゃないかって。
みんなが本気でそう心配して、火の中、水の中、草の中、森の中、土の中、あの子のスカートの中をひたすら探して回ったらしい。
何人かは痴漢と勘違いされて補導され、そして何人かは川で溺れて流されてしまい──うち1人は、死んでしまった。

だから僕は、悔しかったんだ。
何も知らなかった自分が情けなくて、恥ずかしくて、泣いてみんなに謝ったよ。
でも、みんなは僕を叱ったりしなかった。いや、監督は僕と会うや否や何処に行ってたんだと怒鳴り声を上げたけれど、その後泣きながら僕を抱きしめて、本当に良かったって、言ってくれた。
あまりにも強い力で抱きしめるものだから、苦しくって、手に握りしめていたシオカラトンボは、気がついたら絶命していた。

それから僕たちは、チームメイトとシオカラトンボのお墓に向かって毎日手を合わせ、そしてお墓からグラウンドまでランニングをした。
距離にして十数キロあったから、冬が終わった頃には、もうみんな高校生並の体力を身に着けていた。

僕らの学校は中高一貫校だったから、そのまま数年の月日が流れて、僕は高校3年生になった。あの時死んだチームメイトとシオカラトンボの遺影をベンチに並べて、僕らは最後の夏を迎えた。
あれから毎日、少しずつ距離を伸ばして、合計したらもう地球を1周できるくらいの距離を僕らは走ったんだ。
どんな苦難が待ち受けていたって、負けない。

1回戦、2回戦、3回戦──。
僕らは勝ち進み、一歩ずつ、甲子園へと歩みを進めていく。
準々決勝、準決勝、そして決勝。
甲子園常連校の水平高校との一戦を迎えた。
その時の僕らは、負ける気がしなかった。
例え相手の強力打線に何点奪われたって、いくらだって奪い返せる。
そんな気がしたのは、きっと、ベンチで静かに微笑み続ける、チームメイトとシオカラトンボの笑顔があったから。
だから、行こう!
僕らで、みんなで、夢の甲子園へ──そうさ!
僕たちの甲子園という夢へ向けた戦いは、まだ始まったばかりだ!

※最後までお読み頂き誠にありがとうございました。エルナト先生の次回作にご期待ください。

***要約***
グラウンド整備用具のトンボと蜻蛉を勘違いし山奥まで行ってしまった「僕」が何時間も戻って来なかったため、「僕」を探しに行ったチームメイトの一人が事故に巻き込まれ帰らぬ人となってしまった。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
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Cindy