盗めない芸術

芸術界で有名なＭｒ.カメヲ＝タートルは欧米において芸術的な作品を数々残しているカリスマアーティストである。
とりわけ彼の生み出す絵は見る者を魅了し、その作品は多くのアーティストからも称賛され、絶大な支持を得ていた。
先日は大富豪の依頼によりとても精巧な天使の作品を完成させ、新聞でも話題となった。

『カメヲ＝タートル氏　大傑作「ダークブルー・エンジェル」を完成させる』

ここに世界中のお宝を盗み出し、我が物にする世紀の大盗賊。怪人四千面相がこの記事を眺めていた。
「素晴らしい・・・このカメヲ氏の作品にハズレは無い。過去の100以上のどの作品を眺めても素晴らしいものばかりだ」
彼は『乗用車に入るサイズの物で、盗めぬものは無い』と噂され、気に入ったものは何でも手に入れる事ができた。
部屋にあるキャッツアイ。ファラオの秘宝。その他ありとあらゆるお宝は全て彼が盗み出したものである。

しかし、如何に大盗賊・怪人四千面相といえども、カメヲ氏の作品を１つたりとも盗み出す事はできなかった。
一体なぜだろうか？

カメヲ＝タートル氏は稀代のタトゥーアーティストであった。
依頼者の身体に自慢のタトゥーを彫りこんでいく、その技術は精巧を極めており、多くの愛好者を魅了した。
大盗賊・怪人四千面相といえども、人の身体に彫られたタトゥーを盗み出す事はできなかったという訳だ。
しかも、変装を得意とする四千面相の身体に、足が付きやすいタトゥーを彫る事は御法度であった。