遠き日の面影

その双子は、あるときから長い年月を一切会うことなく過ごしてきた。
待ちに待った再会の日、すっかり痩せ細ってしまった兄を見て、弟は「昔と変わらず若いままだ」と驚いた。どういうことだろう？

現代より技術の進歩した将来の話。
双子の兄は宇宙飛行士であった。遥か宇宙への旅を終え、地球に帰ってきた彼の身体は、数年にわたる無重力生活により筋肉も骨もすっかり衰えてしまっている。
一方で、亜光速の移動が引き起こす「ウラシマ効果」により、兄にとっての数年は地球上での数十年にも値するため、地球で生活しすでに高齢の弟から見れば、兄は依然若いままの姿なのであった。