【服飾ますか？オマージュ】躍るなら

床に二つのドレスが並べてある。
デザイン、サイズ、色、全て同一のものである。
しかし、カメコは「今日はこっち！」と言って、右の方にあるドレスを手に取った。
一体何が違うというのだろう？

温度が違う

魚のドレス。魚の頭を切り落として内臓を取った状態の事を言って、人魚のコスプレとは通常関係ない。
魚のセミドレス。魚の頭を残したまま内臓を取った状態の事を言って、やはりこれも人魚のコスプレとは関係ないし、蝉の抜け殻ももちろん関係ない。

ある日、海野家に魚のドレスセットが送られてきた。梱包をほどいてドライアイスをどけると現れたのは、どう見ても人魚のコスプレセット。魚の一切れもありゃしない。
人魚のコスプレセットが送られてきたのは、まあこの際目をつむるとしても、なぜドライアイスで冷やす必要があったのだろう？

それは、このドレスセットを注文した海野カメコがそれを望み、冷凍状態での送付を頼んだからだ。

カメコの正体は雪女であり、温度が高い衣服に触れるとヤケドを負ってしまう。

もっとも、ドレスは氷点下まで冷やしてあれば充分なので、ドライアイスほどの低温が必要なわけでは無い。
でも、氷点下程度のドレスと、ドライアイスでキンキンに冷やしたドレスが並んでいれば、やっぱり後者を選んでしまうカメコなのであった。