閲覧者数: ...

living in your precious memory

[ウミガメのスープ]

優秀な成績を収め、国費留学生として渡航した山本春日。
勉学はもちろんだが、見聞を深め、交友を広げ、旅をし、たくさんの貴重な経験をした。
そして、留学先でたくさんの動画を撮影し、帰国の途に着いた。
この先辛いことがあったら、この動画を振り返って見よう。
そして、自分の励みにするんだ、と心に決めて。

結局、春日は帰国後にその動画を見ることはなかった。
しかし、その動画は、彼女を大きく力づけてくれたと言う。
どういうことだろうか。

*百人一首 その七 【あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも】 からのinspireです。


出題者:
出題時間: 2022年2月27日 22:11
解決時間: 2022年2月27日 22:28
© 2022 gattabianca 作者から明示的に許可をもらわない限り、あなたはこの問題を複製・転載・改変することはできません。
転載元: 「living in your precious memory」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7050
タグ:

音大で優秀な成績を収めた声楽専攻の春日。
留学先では、日々の厳しいレッスンに加え、若い音楽家の仲間たちと交遊を深めたり、日々コンサートに出かけるなど、有意義な日々を過ごしていた。
ところが、留学期間も終了して、いざ帰国という日に、事故に遭ってしまった。
空港に向かうリムジンバスに暴走車両が追突するという大惨事で、多くの死傷者が発生した。
春日は、かろうじて命は取り留めたものの、大破したガラスで目を傷つけてしまい、ほぼ失明に近い状態になってしまった。

失意のうちに帰国した春日を、恋人が迎えにきた。
「春日ちゃん。久しぶり。大変だったね。」
「…あなたに何がわかるの。」
「春日ちゃんの聞いてきた景色を、聴かせて。」
そういうと、恋人は、動画を再生した。
春日は、その動画を見ることはできなかった。
しかし、そこから流れ出したのは、間違いなく春日が聞いてきた音だった。

街中の聞き慣れない言葉の雑踏。
地下鉄のドアが開く時のアナウンス。
スーパーで流れるBGM。
学校の始業と終業のチャイム。
路面電車が接近する時の音。
時々観光馬車の足音が混じる、石畳を歩く人々の足音。
そして大好きだった仲間たちの、心地よい声。

「素敵な音だね。僕は音楽のことはわからないけれど、こんな所で暮らしていた春日ちゃんは、きっと前よりうまく歌えるようになってるんじゃないのかな。」

音楽の道を志す春日は、自分が知らず知らずのうちに、印象的な音の風景を撮影していたということに気づいた。
私はもうこの風景を見ることは二度とないのかもしれない。
でもこの音を聞けば、いつでも私がそこにいたことを思い出せる。
きっとこの場所では、今日もまたこの音が繰り返されているし、私がそこにいて、努力して、楽しんで、たくさんの経験をしてきたことは紛れもない事実だ。
この音の風景は、私の一生の宝物だ。
辛い時にはいつも聞くことにしよう。

そうして春日は、失明のハンディを乗り越えて、一流のソプラノ歌手になったという。

stamp 失明したため、動画を「見る」ことはできなかったが、その音を聞くことで、自らを励ますことができたため。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
Donate using Liberapay
Avatars by Multiavatar.com
Cindy