
男は、多くの同僚や友人が妻や恋人と揉めるような理由で夫婦喧嘩をしたことは、一度もない。
でも、男はそれを少し心苦しく感じている。
なぜだろう。
転載元: 「I wake with your memory over me」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10962
*多数の犠牲者を出した大災害の記事をきっかけに、毎年の記念日を思い出しているから。
男が結婚してから、もう30年になる。
周りの男たちは、記念日を忘れたと言ってよくパートナーとトラブルになっている。
男の5回目の結婚記念日。
この国を広範囲で巻き込んだ大災害が起きた。
よりによって、人生でいちばん大切な記念日に、こんなひどいことが起きるなんて。
男は、ひどくショックだった。
翌年、新聞各紙には「あの災害から1年 被災地は今」のような記事が並んだ。
そうか、あの結婚記念日からもう1年か。
その後も少しずつ扱いは小さくなったが、毎年新聞に記事が出るたびに、男は結婚記念日を思い出した。
5年目には、再び取り扱いが大きくなった。
(ああ、そうか。
ってことは10周年か。
お祝いしなくちゃな。
…待て、俺はこの記事で毎年自分の記念日を思い出しているのか?
あの、何千人もの犠牲を出した災害と引き換えに?)
仕方ない。仕方ないことなのだけれど。
男はその後も毎年心苦しさを秘めたまま、忘れずに結婚記念日を祝うことになるのだった。