
私はある小説を読んでいた。
主人公の名前が自分と同じだと気づいた瞬間、私はひどく腹を立てた。
そして、出版社に抗議の電話までかけたという。
なぜ私は、たかが主人公の名前が同じだっただけで、そこまで怒ったのだろうか?
*Q3 ううらうらさんのリサイクルです。
転載元: 「【本ますか?リサイクル】stay with me a minute, I swear I'll make it worth it」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/11022
*恋人の遺作を勝手に出版されたので。
「あなたをモデルにした作品を書いてあるの。もう少しだけ手を入れたかったけど、もうそんな時間はないみたい」
「そんなこと…言うな」
そう口では言ったものの、私にもわかっていた。
彼女にそれを書き直すだけの時間はもう残されていないということを。
有名作家の彼女にこんなことを言うのは失礼かもしれない。
でも、そんなものに手を入れるんだったら、1分でも1秒でも長くこの世にいてほしい。そう思った。
「これまで発表できなかった作品は、全部まとめてある。他のは、出版社に渡すつもりだけど、これだけはあなたのものにしておきたいの。だって、これは、プライベートな内容だから」
「…ああ」
内容は想像がついている。
知り合ったのは偶然だった。
売れっ子恋愛小説作家の彼女と、一介の会社員の私では、釣り合うはずはなかったし、そもそも当時彼女には夫がいた。
誰にも知られることのなかった、二人の関係。
それでも良かった。
夫を亡くした後も、ありとあらゆるスキャンダルに巻き込まれた彼女のそばにいられるだけで、私は幸せだった。
なぜ神は、こんなにも才能あふれる、こんなにも綺麗な人の命を、こんなにも若く奪おうとしているのだろう。
「もし、発表したくなければしなくてもいい。名前を変えて出版したければ、全部書き換えてもいい。私が死んだら、あなたのいいようにして」
原稿データと共に送られてきたそのメールが、彼女からの最後の言葉になった。
私は、人前では一ファンとして、世界で誰より愛した女性の死を悼んだ。
私に託された、その大切な小説のデータを、とても読む気分にはなれなかった。
それから、数か月して、彼女の小説が立て続けに何本か発表された。
「早逝した美人作家の遺作」だ、どの書店でも平積みになっていた。
そのうち一冊をパラパラとめくり、私は心臓が止まりそうになった。
主人公は、私の名前だった。
家に帰って、彼女から送られてきたデータを見る。
間違いない。この作品だ。
なぜこの原稿が出版社の手に渡ったのか。
どこかにデータが残っていたのだろうか。
いや、そんなことは今考えることではない。
大切な彼女との思い出が、私の知らないところで、踏み躙られていくのを見ているのは耐えられなかった。
「もしもし…◯◯出版ですか。〜〜先生の遺作集の担当編集の方にお繋ぎ願いたいんですが」