閲覧者数: ...

他力本願なゲームメイカー

[ウミガメのスープ]

野球部の杜色は、マネージャーの真緒に好意を抱いている。
真緒にはいつも軽くあしらわれていたが、諦めずに何度もアタックしていた。

杜色は、今年の夏の大会後に引退する。
甲子園大会は2回戦に進出できるかどうかのレベルなので、次が最後の試合になるかもしれない。

真緒に告白する機会も、あと何回巡ってくるかわからない。
そんな焦りを隠しつつ告白した杜色は、真緒から「勝ったら付き合う」という返事をもらった。

またとないチャンスに奮起した杜色は、5 - 4で勝利し、約束通り真緒と恋人になった。

実は9回表で、対戦相手が投げた◯のエラーによって、勝機を見出すことができた杜色。
単なるラッキーで勝てたわけではないのだが、それは一体、どんなエラーだったのだろうか?


出題者:
出題時間: 2025年10月31日 21:43
解決時間: 2025年10月31日 22:14
この作品は
CC BY-NC-ND 4.0
の下で公開されています。
転載元: 「他力本願なゲームメイカー」 作者: 霜ばしら (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10584
タグ:

【 簡易解説 】

◯=コイン

真緒は杜色に、表か裏かを当てるコイントス勝負を持ちかけた。
杜色が当てたら杜色に1点、外したら真緒に1点入り、5点先取した方が勝ちというルール。
使ったコインが、両面表のエラーコインだったので、9回表が出るという結果になった。

杜色は、いつも冗談みたいなノリで真緒に告白していた。
それが本気かどうか確かめたかった真緒は、エラーコインを使ってコイントスの勝負を持ちかけた。
連続で表になる違和感によって両面表だと気づいたら、勝つも負けるも杜色の選択次第となる。
傷つくのが怖い真緒は、杜色が勝ちを選べば、安心して告白を受け入れられると思ったのだ。









「やっぱり俺たち気が合うよね!もう付き合っちゃおうよ!」

「はいはい、もうその冗談聞き飽きましたー」

部活の先輩である杜色と趣味友になって、半年。
数ヶ月前から杜色は、話が盛り上がったついでのように、真緒を口説くようになっていた。
最初は驚いた真緒も、あまりに軽いノリなので、揶揄われていると思って受け流すことにしていた。

「え〜本気なのになあ……信じてよ〜!」

「先輩は結構おモテになられますし、私じゃなくても良いんじゃないですか?」

「全然モテないって!友達としては最高だけど、恋人としてはナシって評判よ!……言ってて悲しくなってきた〜」

杜色が泣き真似をしだしたところで、真緒は100円玉を取り出した。

「……じゃあ私と勝負しませんか?先輩が勝ったら付き合います」

「おっしゃ、何でも来い!」


真緒が提案したのは、コイントスで表か裏かを当てる勝負。
杜色が当てたら杜色に1点、外したら真緒に1点入るルールで、5点先取した方が勝ち。

現在のポイントは2 - 4で、真緒の勝利までリーチとなった。
杜色が薄々抱いていた違和感は、だんだん確信へと変わっていく。

「……ねー真緒ちゃん、この結果なんかおかしくない?」

「そうですか?こういうこともあるんじゃないですかね」

「イカサマ臭いけど、それで有利になるのはこっちなんだよなあ……」

今までの6回全て、表が出ている。
真緒が使っているコインは、どちらも表なのではないか?
そう疑った杜色は2回連続で表を選び、ついに4 - 4のイーブンになった。

「流石に8回連続で表はあり得ないって……」

「そうですね。……さあ先輩、表と裏どちらにしますか?」

「えっと……、いいの?勝っちゃうよ?」

「私に二言はありません」

「いや、あの……無理しないで!今まで全然つれない態度だったじゃん」

「だってそれは……本気にして、『冗談』って言われたら悲しいじゃないですか」


冗談にしか聞こえなくても、何度も言われたら真緒だって意識してしまう。
本気なのではないかと期待しかけては、自惚れだと何度も言い聞かせた。

部活帰りに話すだけで楽しいから、この関係のままで十分。
真緒の中で育ち始めた恋心が、一歩踏み出す勇気を削っていった。

真緒には、ネガティブな思考から抜け出したい時にするおまじないがある。

使うのは、お守りにしている両面表のエラーコイン。
「表なら良い結果になる」と願いを込めて、コイントスをする。
必ず表になるコイントスで、上手くいくと信じられるように自分に暗示をかけるのだ。

「表なら先輩の気持ちは本気」

真緒はついに、そう願ってコイントスをしてしまった。
それなのに、何度おまじないをしても、不安な気持ちは消えてくれない。
それでも真緒は、杜色のことで苦しくなる度におまじないを試した。

いつものように、お守りのコインを眺めていた時。
真緒は、このコインを使えば、杜色が本気かどうか確かめられるのではないかと考えた。

杜色が絶対に勝てる勝負を持ちかけて、「勝ったら付き合う」と返事をする。
それで杜色が負けを選んだら、仲の良い後輩として、この気持ちに折り合いをつけようと決めた。


震える声で本音を漏らした真緒を見て、杜色は自分の情けなさを自覚した。
気まずくなるのが怖くて、保険をかけてしまっていたのだ。

「ほんとのほんとに本気だったんだけど、日和って冗談っぽくしちゃってた……ごめん」

覚悟を決めた杜色は、「表」を選んで勝負に勝った。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
Donate using Liberapay
Avatars by Multiavatar.com
Cindy