「ねえ、私のこと、覚えてる?」
「お、覚えてるし!」
そうは言ったものの、ぶっちゃけ覚えてない。誰だっけ…?
Q2 フォイ=ドラコ丸さんのリサイクルです
転載元: 「【覚えていますか?リサイクル】次会ったときは覚えておけよ」 作者: 光四 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10755交通事故&記憶喪失
ウミコ「危ない!!」
閑静な住宅街に響く叫び声。放課後、帰宅中の女子高生ウミコが、スマホを見ながら歩いていた同級生のラテコが不注意で車にひかれそうだったところを見かけて、慌てて後ろから抱きつくようにして突き飛ばしたのだ。
あのままだったらラテコは轢き殺されていてもおかしくない位置関係だったが、ウミコが突き飛ばしたことでラテコは無事に済んだ。
しかし、
ラテコ「う、ウミコちゃん……!?ありがとう……助かったよ……。だ、大丈夫……?」
命拾いしたことに気づいたラテコが、しがみついたままのウミコに話しかける。ラテコからはよく見えなかったが、ウミコのほうは車にわずかに接触するぐらいはしたかもしれない。
ウミコが顔を上げてラテコを見て、
ウミコ「……あなた……誰?」
と不審そうに聞いた。
ラテコ「……えっ?誰って……ラテコだよ、ウミコちゃんの友達の、ラテコ」
ウミコ「……ラテコ……?ウミコ……友達……?」
何を言ってるか分からない、という顔でラテコを見るウミコ。
ラテコ「う、ウミコちゃん!?」
ラテコが顔を蒼白にして叫ぶ。
ラテコ「どうしたの!?私が分からないの!?私は、ラテコ、ウミコちゃんの友達!ウミコちゃんは、水平高校の1年生で、文芸部で頭や記憶力が良くて難しい本が大好きだけど漫画やアニメにも詳しくてーー」
ーーと、そのとき、ウミコの頭から血が一滴流れた。
ラテコ「!!う、ウミコちゃん、頭から血が……!ま、待ってて、今救急車呼ぶから……!」
周囲に人はいない。気が動転していたが、ラテコが自分でやるしかない。ウミコにしがみつかれたまま、スマホで119番通報をするラテコ。
ラテコ「あ、ここ住所どこだろう……!?ご、ごめん、ウミコちゃん、ちょっとどいて……!」
スマホを操作しながら起き上がり、近くの電柱を探すラテコ。電柱には電柱番号が載っていて、緊急時にそれを伝えれば位置をすぐに特定して救急車が来やすいことをラテコは知っていた。
そのあいだ、気が動転しているラテコを見ながら、ウミコは、
ウミコ(何をあんなに慌てているのかしら、あの人……)
事故で身体に外傷はほとんどないものの頭を打ち、記憶喪失に近い一時的な意識障害を起こし、友達を称するも全く記憶にないラテコをただぼーっと眺めていることしか出来なかった。今いるこの場所も、本当は毎日通っている通学路なのだが、全く思い出せなかった。
ウミコから50メートルほど離れたところに電柱を見つけ、救急車の手配を終えたところで、
カメコ「……どうしたの?何かあったの?」
聞き慣れた声が、ラテコの後ろから聞こえた。もう一人の友人のカメコだ。
ラテコ「……か、カメコちゃん!大変なの、ウミコちゃんが、私をかばって、交通事故に遭って……!」
カメコ「交通事故!?」
ラテコ「しかも、なんか、ウミコちゃん、頭を打ったのか、様子がおかしくて……私のことも分からなくなってて……!」
カメコ「……な、何それ!?記憶喪失、ってこと!?」
ラテコ「た、多分、そういうのかも……。どうしよう……どうしよう、私が、私がスマホを見ながら歩いていたせいで……私のせいでウミコちゃんが……!」
カメコ「お、落ち着いて!」
地面にへたり込み、両手で顔を抑えて泣き崩れるラテコの両肩をカメコがガッとつかみ、
カメコ「……救急車はもう呼んだんだよね?今電話してたのがそうでしょ?」
ラテコ「……う、うん。ここから近いからすぐ到着する、とは言われたけど……」
カメコ「ウミコちゃんは、大きな怪我とかはないの?」
ラテコ「……身体のほうは、大丈夫かもしれないけど……」
ウミコは、電柱から50メートルほど離れた元の場所、車にひかれた場所に、さっきからそのままいる。棒立ちでラテコとカメコのほうをじっと見ており、額から血は流れているものの、ふらつくような感じも全くなく、一見全然大丈夫そうに見える。ただ、結構距離があるので、こちらの話は聞こえていないだろう。
ラテコ「……でも、見た目じゃ分からない怪我だったりもするし……」
カメコ「……ん、分かった。じゃあ、救急車が来るまで、私達が出来そうなことは無さそうかな。私のことも分からなくなってたりするかね?」
ラテコ「それは……聞いてみないと、分からないけど……」
カメコ「んじゃ聞いてみようか、私のことを覚えてるかどうか。んで、駄目だったら、私の名前はあえて出さずに、ヒントとか色々出しながら、何とか自力で思い出してもらおうか。……私やラテコちゃんのことを忘れるなんて許さないよ、ウミコちゃん」
ラテコ「……カメコちゃん……」
へたり込んだままのラテコをいったんその場に残し、ウミコのほうに向かうカメコ。ウミコは一瞬、警戒するような表情を浮かべるが、
ウミコ(……あの人も、私の友達……なの?それとも、全然関係ない人?でも、分からない、全然思い出せない……けど……)
カメコがウミコの目の前までやってきて立ち止まり、
カメコ「ねえ、私のこと、覚えてる?」
そう聞かれたウミコは、カメコの後ろで泣き崩れているラテコを見てから、
ウミコ「お、覚えてるし!」
誰かも分からない相手だが、「友達」があんなふうに泣き崩れる姿をもう見たくない一心から、とっさに嘘をついた。
その言葉に、一瞬ぱあっと明るい表情になるカメコだったが……。
ウミコ(そうは言ったものの、ぶっちゃけ覚えてない。誰だっけ…?)
カメコはウミコに対して、何とか自力で自分のことを思い出してもらおうと、ウミコと一緒によく遊んでいた人形とか見せたり、人気アニメのエンディングテーマのダンスを突然踊ったりする。カメコの名前を自分から出すことはせず、聞かれても答えず悲しい顔をして黙り込む。
ウミコはそれらを見て記憶を刺激され、思い出せそうにもなるが、それだけでは解決しない。
また問題文の時点ではラテコの存在は隠されているが、ラテコの姿は見えており、記憶を失ったあとのラテコとのやり取りは今のウミコも覚えている。しかし記憶喪失云々はラテコは口にしないまま、救急車を呼ぶために電柱を探して少し離れたところに行ってしまった。なので、頭がうまく働かないのもあって、ウミコは自分が記憶喪失だということをよく分かっていない。
カメコよりもラテコのほうが状況は推察しやすいか。
FA条件は「交通事故」と「記憶喪失」。状況からそれらを推察しウミコに伝えることで、それをきっかけにウミコはすべてを思い出し、正解となる。「交通事故」と「記憶喪失」を(そのままの言葉通りでなくとも)当てたそれぞれに正解をつける。
ラテコ「良かった、ウミコちゃん、全部思い出して……。一時はどうなることかと……」
ウミコ「ごめんねー、ラテコちゃんやカメコちゃんに心配かけちゃって……」
ラテコ「いやいや、謝るのはこっちだよー。私が不注意で車にひかれそうになったりしなければ……」
ウミコ「んーでも、このあと警察も呼ぶでしょ?とっさに見た車のナンバーははっきり覚えてる……というか思い出したから、あとで警察に伝えてやるわ」
ラテコ「そ、そんなことまで思い出したんだ……あ!そういえば私も、ちょうちょさんをスマホで追いながら動画撮ってたから、もしかしたら……やっぱり!車のナンバーはっきり映ってる!」
カメコ「おお、じゃあ決定的だね……あ、救急車来たね、ウミコちゃん」
ウミコ「そうね。まず大丈夫だとは思うけど、一応このまま病院行ってくるわ」
ラテコ「そ、そんなこと言わずに、きちんと病状伝えて、しっかり調べてもらってね……?」
ウミコ「はいはい」
精密検査の結果、ウミコの身体にも頭部にも特に異常は無し。1日だけ入院して翌日すぐに退院した。そして同じ日にひき逃げ犯も特定され、容疑も認めたため逮捕されたのだった。