【黒ますか？オマージュ】the pink champagne on ice

「あなたお帰りなさい　良かったわ　陸に帰ったっきりになってしまったら　どうしようかと思っていたのよ」
「心配するな　大丈夫だよ…ああ　これお土産の猪の肉と鯛焼き　念のため　ちゃんと防水バッグに入れてある」
「ありがとう　嬉しいわ　そうそう　たまには陸の異国のお料理に挑戦してみたのよ　召し上がって」
「？　これはなんだ？」
「ちょうどあなたが留守にしている間　異国の豪華客船が沈没しましたの　そこの方が教えてくださって」
「これ　真っ黒じゃないか…」
「ええ　これを使ったの」
「これ　お前がいつも書とか水墨画に使ってる…待て　そんな墨汁食わせる気か？おい　俺死んじまうぞ？勘弁してくれ！誓っても陸で浮気なんかしてない！！ああ　さようなら　みんな…」
「まあなんて人聞きの悪い　とにかく一口召し上がってくださいな」
「…うまい」
「ええ　ここで私が使っている墨汁はイカスミですもの　その方がずっと手に入りやすいのですから　
　このお料理は『イカスミパスタ』って言うらしいの　その船にあったこちらが合うんですって…なんて綺麗な桃色のお酒なんでしょう　しゅわしゅわしていますわね」
「確かに　うまい…ところで　その豪華客船に乗ってたとかいう人はどうなったんだ」
「あなたと同じように『こちらにずっといてもよろしくってよ』ってお伝えしたのに　しばらくしたら　『冗談じゃない　俺は陸に帰る』って飛び出してしまって」
「そ、それで…」
「生きて水面まで上がればいいけれど　最近海が荒れ気味だからどうかしら　沈没したり遭難する船が跡を絶たないようね」
「お、おう…」

「ちょうど１匹ウミガメが上がったんだ。スープを作ったよ。」