着物姿の女性の所作というのは、なぜこんなにも美しいのだろう。
男は、楚々とした和服姿の女性が、さりげなく袂を押さえる仕草や、やさしく扇子で風を送る様にしばし目を奪われていた。
「どうかなさいましたか?」
こちらに眼差しを向けた女性はたおやかで、周りにいるどの大胆なドレス姿の女性より艶やかだった。
「ところで、貴女は左利きですか?」
「いいえ…なぜ、そのようなことを?」
「それはご自身でなさったのではないのですか?」
「…ええ、恥ずかしながら。」
「もし、僕でよろしければ。」
「えっ…」
女は顔を赤らめながら、また次のパーティも和服を着るだろうと考えたのだが、なぜだろう。
転載元: 「and if I'm a hot shot」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10481
「僕が射ってさしあげますよ。
その腕、最後に射ってからだいぶ経つでしょう?」
「うれしいわ。
私、どうしても自分で針を刺すのが怖くって。
でも、吸うだけでは物足りなくて困っていたの。
…ようやく注射痕が薄くなってきたのに、またしばらくドレスはお預けね。」
瞼を伏せて微笑む彼女からは、ほんのりとブラック・アフガノの香りがした。