マイメロディー

[ウミガメのスープ]

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数年前,発表した楽曲が大ヒットし,ボーカルである亀田の高い歌唱力や作曲能力もあって,一躍有名アーティストになったタートルズ。
しかし,最近はすっかり人気もかげって,CDの売り上げやライブに来る人数も減る一方。
一部ファンの間でも解散するのではないか,あるいは解散した方が良いのではないか,という話も出始めた。

さて,高校生の時から亀田のファンであり,今でも彼の音楽の才能を高く評価している川上は,
亀田が最近作った楽曲が特に好みの曲だったので,やはりタートルズは解散するべきだろうと考えた。

川上がそう考えた理由およびその経緯を補足してください。


出題者:
出題時間: 2018年12月16日 10:43
解決時間: 2018年12月18日 8:50
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「武道館ありがとーーー!!絶対ここに帰ってくるからその時はまた遊びに来いよなーー!!」

最後に君がそう言い残してライブツアーを締めくくったのが5年前。
おそらく僕らが武道館に立つことはもうないのだろう。



君と出会ったのは高校1年の時。君は学校にギターを持ち込んでは先生に怒られるクラスメイトだったよね。名前の順が近いこともあって,君とはよく話したし,自作の曲とか言ってムリヤリ聞かせられたりもした。
当時からギターや作曲の技術があったのかは分からないけど,君の曲には「ワクワク」があった。僕はこの頃から君のファンだったんだろうな。
それからは2人で音楽の練習をするようになった。と言っても,君が先生で僕は教わりっぱなしだったけど。

なんとかギターを弾けるようになったぐらいの時,君は「川上,オレとバンドやってみない?」って誘ってくれたね。僕は単純に嬉しかった。もっと君の曲を聞けるようになるんだから。
「バンドの名前だけど,亀田だしタートルズでいい?」って聞かれた時はちょっとビックリしたけどね。君がちょっと自己顕示欲強いのは知ってたけどさ。何というか…。そのセンスはどうなの?
まぁでも,実際僕が曲を作るでもないし,演奏だって君の方が上手いし,何より長く続くとも思ってなかったし,「別に良いよ」って言った。

でも気づいたら今まで一緒に音楽を続けてる。
いや,本当は高校までにするつもりで,周りが受験だ就職だって言い出した頃に「進学するからバンドやめるわ」って言うつもりだったんだ。
そしたら君が「オレこのまま音楽やっていこうと思うんだけど,一緒に来てくれない?大丈夫だって!オレが生活には困らないようにしてやるからさ!」って言うんだもん。そんな先手打たれちゃったらね。

でも,最初は上手くいかないことだらけだったと思う。…って,何もしてない僕が言うのも失礼なんだけど。CDの売れ行きも悪かったせいで,レーベルの偉い人から「もっと良い曲作れないの?」なんて言われたりもしたっけ。まぁ会社もボランティアで僕たちの応援をしてるワケじゃないし仕方ないかもなんだけどさ。
それでも君の曲と声は影響力があったんだろうね。「毎回ライブ来てます!」って言ってくれる人もいたし,同業者の「亀田はスゴい」って声もちらほら聞くようになった。


「アニメ主題歌の依頼がタートルズに来てるんだけど,…やれる?」ってマネージャーから言われた時はビックリしたよね。
漫画週刊誌『HopStep』の中でも常に人気投票上位の漫画『まじめ人間タートルズ』のアニメ主題歌。後にブレイクするアーティストがこのアニメ主題歌を担当することが多いことから「若手ミュージシャンの登竜門アニメ」なんて言われたりもしてた。
噂で聞いた話だから本当かは分からないけど,僕らをキャスティングした理由,『まじめ人間タートルズ』だし「タートルズ」に歌わせたら面白いんじゃない?ってアニメ制作側のギャグのつもりだったらしいよ。

君は器用な人間だ。アニメのイメージも取り込みつつ自然と盛り上がるような曲を作ってみせた。今までの君の曲とは違うテイストだったから,「君はこんな引き出しも持ってたのか」って感心したんだよね。
でも曲のタイトルを『まじめ人間』にしたのは,僕はちょっと恥ずかしかったかな。曲を納めるやいなや,アニメ制作サイドから「タイトルこれでいいんですか?」って確認来たのは面白かったけどね。

結果的に『まじめ人間』は僕らの代表曲になった。いや,『まじめ人間』は『まじめ人間タートルズ』と聞いて思い浮かべる主題歌の代表曲になった,と言った方が良いかな。確かに僕らの主題歌が流れていたころは,『まじめ人間タートルズ』のストーリーも山場だった。その運もあったかもしれない。でもそれだけじゃここまでの代表曲にはなれないよ。間違いなく『まじめ人間』をヒットさせたのは君の手柄だ。

この曲のおかげでライブツアーを開催することもできた。自分たちの事を見に来てくれた大勢の人たちの前で自分の歌いたい歌を歌う。楽しかったよね?僕ですら楽しかったんだから,君だって楽しかったに違いない。


君の曲が「変わった」と思うようになったのは,この少し後ぐらいからだったかな。歌い方にしろコード進行にしろ,昔に比べて「良く出来た」曲にはなっていたと思う。君のおかげで僕も音楽ちょっとは詳しくなったんだよね。
ただなんとなく,本当になんとなくだけど,高校生の時に君の歌から感じた「ワクワク」は薄くなっていった気はしていた。

だからといって,別に君のやり方を否定するつもりはなかった。売れるように作ることだって立派な才能だし,何より僕は君の音楽を信用していた。変わったのは「君の曲」じゃなくて「僕の耳」って可能性だってあったしね。

でもやっぱり「それなりの売れ線曲」が通用するほど,音楽界は甘くなかった。デビューしたての頃に比べればかなりマシではあるんだけど,CD売り上げもライブ動員も目に見えて減っていった。『まじめ人間』で僕たちを知ってくれたファンは,また他の人気になりつつあるミュージシャンに流れていった。「毎回ライブ来てます!」って言ってくれてた人もいつからか見なくなったっけ。


幸か不幸か,締め切りに追われるような仕事が少なくなった分,一緒に家やスタジオで曲を作る時間は増えていった。…まぁ僕はほとんど完成した曲を聞いて,その通りに演奏するだけなんだけど。
ある時,ふと机の上に僕が見たことないCDが置いてあった。新曲出来たのかな?って思って軽い気持ちで聞いてみたんだ。
僕はビックリした。声質こそ最近の君のものだったが,そこには僕が高校生の頃に君に感じていた「ワクワク」がいっぱい詰まってた。

君によれば,そのCDは「一般ウケが良くなさそうだから発表はしないであろう楽曲集」らしい。
一般ウケが良くなさそう,という感覚はきっとそんなに間違っていない。だから僕は聞いた。

「売れることってそんなに大事?」

僕はどんな答えを期待していたのだろう。
「だって,みんなにオレの曲聞いて欲しいじゃん!」うん。ナルシストな君らしい答えだ。
「売れ線の曲は「売れる」曲なんだから,それだけファンのみんなが求めてる・共感できる曲なのかな?って」へぇ,君はそんな事も考えられるようになっていたのか。

君の答えはこうだ。

「高校の時,川上には『オレが生活には困らないようにしてやるからさ!』って約束したし。」


…やっぱり君は不器用な人間だ。そんな口約束,律儀に覚えてなくてもいいのに。自分のやりたい音楽に優先させる必要なんてないのに。まぁ,相方の作る曲が変わった理由も分からないような不器用な人間とずっと一緒にいるんだし仕方ないか。

なんにせよ,これでハッキリした。
「君の曲」も「僕の耳」も変わっていない。
変わったのは「君の発表曲」。変えているのは「僕の存在」だ。

だとしたら答えは簡単。
タートルズは解散しよう。

いつか本当に「君の曲」が変わってしまう前に,「ワクワク」がなくなってしまう前に,タートルズは終わらせよう。もともと亀田でしか認知されていないタートルズだ。僕がいなくなっても,今の君なら十分にやっていける能力は持っている。亀田の一番のファンが言ってるんだから間違いないよ。


さて,昔から作曲は君に任せっきりだったけど,より良い曲にするために,タートルズの川上として最初で最後の口出しをする。

君には君の好きなメロディーを奏でて欲しい。
それが僕の好きなメロディーだから。














「みんなアンコールありがとーー!!! じゃあ早速曲に…,と言いたいところなんだけど,なんと今日のライブはスペシャルゲストの方が来てまーす。みんな拍手で迎えてあげてくれ!それじゃカモン!」
「亀田のライブに足を運んでくださった皆様,こんにちは。海亀楽器・幕張店から来ました。店長の川上です。」

(ざわざわ…)

「んー,反応見るとコイツが誰か分かった人が3割ってところかな。川上どう思う?」
「タートルズの時からこれぐらいの知名度だった気がするから案外覚えてくれてる人がいてビックリしてる。」
「ということで,昔オレがやってたバンド「タートルズ」の元相棒の川上でーす。せっかく来てもらったのに「来てくれてありがとう。じゃあね。」じゃ寂しいよね?ってことで,7年ぶりに「タートルズ」で演奏しようと思います。ココでやるってなると…,12年ぶり,かな?」
「久しぶりすぎて,ちゃんと演奏できるか不安だなー。」
「とか言って,今日のためにしっかり練習してきたでしょ?昔から『まじめ人間』なんだから。」
「君とは違って,ね。」
「はぁーー,久しぶりだってのに冷たいねぇ。まぁいいわ。今日来たみんなはラッキーだな!今日の歌を目に・耳に・心に焼き付けて帰ってくれよな!じゃあ曲行くぞ!」

「「タートルズで『まじめ人間』!」」


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アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
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Cindy